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どうして根(神経)の治療には何回もかかるのでしょう?

2018年5月26日

前回は神経を抜く「抜髄」についてお伝えしましたが、その後の治療についてのご質問をいただきましたので、お伝えしたいと思います。

「虫歯が神経まで行っちゃっていますから、残念ですが神経を抜きましょう。」歯医者さんにそう言われて根管治療(抜髄後の根っこの消毒)を始めたものの、いつまでたっても終わらない。「一体いつになったら終わるんだろう?」なんて不安になったことがありますか。では、根管治療は本当にそんなに時間がかかるものなのでしょうか、ご説明します。

実は、歯の根管の治療の90パーセントは1〜3回で終わります。歯の神経を取る治療では、まず神経を取り、消毒して、薬を詰めるという3ステップを踏みますが、この際、歯の神経が通っている根管が多ければ多いほど時間がかかります。例えば、根管が1、2本の場合には、1、2回程度、3、4本の場合には2、3回程度かかります。しかし、ここで一つポイントがあります。初めて歯の神経の治療をするときに、神経の管が根管に残ってしまうと、何年かしてからもう一度やり直さないといけなくなります。ですから、神経の治療は一回目がとても重要です。さらに、歯の根管はとても細いため神経の治療は非常に繊細な治療です。10円玉の直径と同じ大きさの道具を駆使してお掃除と消毒を繰り返します。実際には歯の根管は直線ではありません。途中から分岐している場合もあります。お時間や回数がかかるのはそのためです。

さて、中には4、5回かけて、やっと終わる神経治療もあります。初めの治療がうまくいかず、根の先にウミがたまってしまうケースや、歯の痛みを我慢してそのままにしていたために、神経が死んで、根の中が腐ってしまうケースなどがあります。いずれの場合も根の中をまた消毒しなければいけないので時間がかかってしまいます。特に、以前神経を治療したことがある歯の場合、歯の中に細菌が入らないように詰めた硬いお薬が入っています。それを少しずつ溶かしながら消毒を行うので、その分時間がかかってしまいます。

また、これはまれなケースですが、治療が終わるまでに6回以上かかることもあります。これは、細菌が歯だけでなく、あごの骨まで広がってしまった場合です。例えば、神経の治療をしている途中に忙しくなって歯科医院に通えなくなる患者様がいます。その場合、時間が空いてしまうので、仮のふたのすき間から、細菌がどんどんと中に入り、周りの骨を溶かしてしまうのです。そうなると、歯だけでなく周りの骨が治るのも待つ必要があるので、余計に時間がかかります。イメージとしてはお腹に穴を開け創膏などを貼ったままにして、痛くない、忙しいからと放置していた状態です。そう考えるといかがでしょうか。

根管治療をできるだけ短時間で終わらせるためには、治療の一回目にできるだけ良い治療を受けることと、痛みがなくなったからといって安心して治療の間隔を開けすぎないようにすることが大切です。

次回は、神経を抜いたはずなのになぜ痛みがあるの?というタイトルです。

どうして神経を抜くのでしょう?

2018年5月19日


前回の「むし歯の進行度合い・C3」の部分でも触れた「神経を抜く」ということについてお伝えしたいと思います。

「なるべく神経を残したいのですが、虫歯が深くて神経までいっています。残念ですが仕方がありません、神経を抜きましょう。」
と私は歯医者さんに言われるままに神経を抜いてしまった歯が数本あります。その当時は、何も考えず「大変な治療をしているなあ」「これで痛みがなくなるなあ」と何も考えずに受診していました。歯科業界に入ってから知ったのは

「歯は神経を抜くと弱ってしまうから、できるだけ抜かない方が良い」

という事実です。知って愕然としました。抜かなくてはならないような大きな虫歯を作ってしまったことを今でも後悔しています。

どうしてそんなに大切な歯の神経なのに抜く治療が行われるのでしょうか。

まずは歯の神経の構造からみてみましょう。ご存じのように、どんな歯にも歯の中に神経と血管が通っています。レントゲン写真を撮ると、歯の中に黒く筋状のものが入っているのが見えますが、その部分が歯の神経がある「歯髄」と呼ばれる組織です。さて、歯の神経は歯によって数が異なります。前歯では1本、奥歯だと2〜4本ほどあります。この神経のおかげで、わたしたちは歯に触れたものが熱いのか冷たいのか感じることができます。また、虫歯になったときには、歯にしみる感覚で早期に発見することが可能になるのです。

歯の神経はどれも、顎の骨の中の太い神経にまでつながっています。そのため、1本の歯が悪くなっているだけなのに、ほかの歯全体も痛みを感じることがあるのです。また、歯の中の神経とは別に、歯の周り、歯と歯茎をつなぐ歯根膜と呼ばれる部分にも神経が張り巡らされています。そのため、たとえ歯の中の神経が治療でなくなってしまったとしても、食べ物の食感や歯がかみ合っているかどうかを感じることはできます。

では、どんな場合に神経治療が行われるのでしょうか。それは、主に虫歯の菌が神経まで達してしまった場合です。歯は表面から数えると、主に三段階の層に分けることができます。一番表面はエナメル質と呼ばれる硬い部分です。虫歯が浅く、エナメル質にできているだけなら、麻酔なしでも痛みを感じることなく歯を削ることができます。そして、その下には象牙質と呼ばれる少し軟らかい組織がありますが、虫歯がそこまででとどまっていれば、多少痛みを感じるとしても、やはり神経の治療は必要ありません。

では、虫歯菌がさらにその下、歯髄と呼ばれる組織まで進行していたらどうなるのでしょうか。もしも神経を腐らせているとしたら、菌に感染してしまった神経を放っておくわけにはいきません。取り除いて消毒することにより、それ以上菌が進行するのを防ぐ必要があります。

もちろん歯医者さんも歯の大切な神経を抜きたくはありません。しかし、一度感染してしまった場合には、最悪神経を抜くことが必要になると覚えておきましょう。
今はできるだけ神経を残す方向で治療を行う歯科医院が増えてきています。いいづか歯科でもできるだけ削らない、歯や神経を残す方向で治療を行っています。
最も大切なことは、そのようになる前に歯医者さんで治療を受けること、むし歯を作らないような生活習慣を身につけることです。

いいづか歯科では、虫歯にならないための予防が大切だと考えています。大切な歯を守り続けるためにも、定期的に検診を受けることをおすすめします。

虫歯の進行度合いとは?

2018年5月12日

高校生の頃、知り合いの歯医者さんに「熱いものがしみる」と話したところ、「熱いものがしみるって、けっこうやばいよ。すぐに来て」と脅されました。
慌ててその歯医者さんに行ったところ、本当に大きな虫歯になっていました。

「歯に熱いものがしみる=大きな虫歯になっている」
という公式がインプットされていたのですが、本当のところはどうなのでしょうか。虫歯の進行と症状の関係について、少しお話したいと思います。

前回お伝えしたように、虫歯は虫歯の原因菌、通称ミュータンス菌と呼ばれる細菌に感染することにより起こります。
そして、この細菌の感染度合により虫歯の大きさや呼び名が変わってきます。

歯科医院の定期検診などにいくと、歯医者さんが、歯を診ながら「C1」、「C2」、「C3」、「C4」と呪文のような言葉を言っているのを聞いたことがありませんか?
実は、虫歯の段階を表す言葉なのです。

まずは「C1」と呼ばれる段階ですが、これは虫歯の一番初期の段階で、虫歯が歯の表面の「エナメル質」にできている状態です。
この段階では痛みを感じることがありません。

その次が「C2」と呼ばれる段階で、「C1」より少し進んだ虫歯です。
歯の「エナメル質の」下にある「象牙質」と呼ばれる組織まで虫歯が進んでおり、ここには歯の神経に通じる細い管がたくさんあります。そのため、甘いものや冷たいものが時々しみて、痛くなることがあります。この「象牙質」は「エナメル質」と比べ軟らかいため、ここで虫歯が大きくなってしまうことがあります。

さらに虫歯が進むと、「C3」と呼ばれる段階に入ります。
これは、「象牙質」を突き抜けて、「歯髄」と呼ばれる歯の神経にまで虫歯がとどいてしまった状態です。この段階になると、冷たいもの、甘いものだけでなく、熱いものまでしみるようになります。まさにこの状態だったのですね。
「C3」では、食べ物が虫歯の穴に入ると「ズキッ」と痛んだり、何もしていないのに痛んだりするようになります。これを私たちは自発痛などと呼んでいます。これは、「歯髄」が炎症を起こしているために起こる現象です。こうなってしまうと神経を抜いてしまうしかありません。この治療については後日お伝えします。

「C4」の段階まで行くと、かなり大変な虫歯です。歯の根っこしか残っていない状態です。これを残根などと呼んでいます。この段階の虫歯を放置しておくと、根っこの先に膿(うみ)の袋ができてしまい、あごや顔がはれてしまうこともあります。
虫歯ができてしまった場合、大切なのは、できるだけ早く歯医者さんにかかることです。
痛み止め等で一時的に痛みが治まっても、根本的に治っているわけではありません。
予防は治療に勝ります。いいづか歯科では、皆さんが歯科検診などを定期的に受けて、虫歯のない健康的な歯を守るようお勧めしています。

虫歯ってなんでしょう?

2018年4月24日

今回は、歯を失う原因の一つである虫歯についてお伝えしようと思います。

ムシ歯予防のポスターを皆様は何度も見たことがあると思います。その中に描かれている「虫歯菌」を見たことがありますか。
「虫歯菌」は、いかにも悪そうな顔をしながら手に持った槍で歯を攻撃しています。
子どものころにそんな「虫歯菌」を見て、なんとなく「虫歯は、虫歯菌が歯を攻撃するからできるんだな」とイメージされた方も多いかもしれません。でも、本当のところ、虫歯はどうやってできるのでしょうか。

一言でいうと、虫歯の原因となっているのは特定の細菌です。代表的な虫歯の原因菌は、「ストレプトコッカス・ミュータンス」と呼ばれる細菌です。一般的にはミュータンス菌と言われていて、その菌に感染することにより、虫歯ができるのです。では虫歯がどのように「虫歯菌」に感染するのか、詳しく見てみましょう。

まず、食器の使いまわしなどで、主に家族から感染します。免疫機構が未発達な3歳までに感染してしまうことが大半です。この細菌は、歯磨きなどの清掃を行っても全て取り除くことはできませんが、菌の量を抑えることはできます。
いったん付着すると、倍々方式で数を増やしていき、食べ物に含まれる糖を、酵素を使って分解していきます。
この分解により、酸と不溶性グルカンと呼ばれる物質を作りだします。酸性雨に打たれ続けると、銅像や植物がダメージを受けるのと同じで、この細菌が出す酸は、歯の一番上の層である「エナメル質」を溶かしていきます。
以前のブログでお伝えしたように、「エナメル質」は宝石の水晶と同じほど硬い組織ですから、ミュータンス菌の作りだす酸がいかに強力かがよくわかります。
酸により「エナメル質」が溶かされたこの状態を、「脱灰」と言いますが、これが虫歯の始まりです。しかし、この段階ではまだ痛みを感じることはありません。

さて、この「脱灰」がさらに進むと、ミュータンス菌は「エナメル質」を突き抜けて、その下の組織、「象牙質」へとたどり着きます。この「象牙質」は、「エナメル質」よりも軟らく、虫歯が大きく広がっていくことがあります。この時点で、甘いものや冷たいものが歯にしみて、痛みを感じるようになります。虫歯がさらに進むと、虫歯がその下の神経にとどいてしまいます。そのため、熱いものなどもしみるようになるのです。

一度虫歯になってしまった歯は、どんなに頑張って歯磨きをしても、痛み止めのお薬を飲んでも治ることはありません。歯医者さんで治療を受けるしかないでのですが、それでも元気な歯と全く同じ状態にはできません。つまり、一度虫歯になってしまったら、二度と元には戻らないということです。予防はとても大切ですね。

いいづか歯科では、皆さんが虫歯のないきれいな歯で生活を楽しむことを願っています。歯科検診などをこまめに受けて、悪いミュータンス菌に負けない、美しい歯を保ちましょう。

よく噛んで食べると何がよいのでしょう?

2018年4月17日

わたしたちは小学校のころ、給食の時間になると、
「よく噛んで食べましょう!」「ひと口30回噛みましょう!」

などと注意がうながされていました。そのため、なんとなく「食事はよく噛んで食べた方がいいんだ」と頭の中にインプットされていましたが、実際、よく噛むことはそんなに大切なのでしょうか。現代人の噛む回数と健康の関係について少し考えてみたいとおもいます。

ご存じかもしれませんが、食事をしてから脳の満腹中枢に指令が行くまでには、少し時間がかかります。
そのため、あまり噛まずに早食いをしていると、脳に指令がいく前にたくさんの量を食べてしまい、結果として肥満につながるのです。
やや逆説的な話ですが、肥満の方の中に、歯が悪い方が多いのも事実です。
歯が痛んだり、歯がなかったりするため、しっかり噛めずに飲み込むことが習慣になってしまい、肥満になってしまうのではないでしょうか。

よく噛むと、唾液が多く出ますが、この唾液が健康な体作りにつながります。
なぜなら、唾液の成分には、お口の洗浄作用、お口やのどの粘膜の保護、殺菌力等があるので、お口の衛生に役立つのです。

食べ物をかむこと自体も、歯と歯茎の健康に欠かせません。
物を噛むことで、歯と歯茎は食べ物によってこすられます。それが歯についた汚れを落とし、自然なマッサージ効果をもたらし、虫歯や歯周病になるリスクが下がるのです。特に繊維質の固い物を食べることは有効であると言われています。

現代人の噛む回数は、卑弥呼の6分の1ほどだと言われています。
卑弥呼が生きた弥生時代には、一回の食事で平均3990回だった咀嚼回数が、源頼朝の時代には2654回、そして徳川家康の時代には1465回になり、今では620回にまで低下しているようです。
主な原因は、弥生時代の食事が玄米や乾燥した木の実に干し魚といった、噛みごたえのある硬い食物が中心だったのに対し、現代人の食事はあまり噛まずに飲み込める、軟らかいものに変化していることにあるようです。
確かに、レストランで出される食事の多くは、ハンバーグ、スパゲッティ、カレー、オムライスなどのように軟らかいものが中心になってきていますね。

このように現代人の食生活は、歯科の観点からすると、心配な点がたくさんあります。
歯科医院に虫歯や歯周病の治療に来られる方に、まずお勧めしたいのは、おいしい食事をよく噛んで味わって、健康な生活を送ることです。そして歯医者さんには健康を維持するためにお越しいただくことが、いいづか歯科の望みです。

どうして歯は一生かみ続けることができるのでしょうか?

2018年4月14日

こんにちは、院長の飯塚です。今日は歯の話をお伝えしたいと思います。

1日に三度、食事のたびに使われるのが「歯」です。1日に噛む回数はトータルで500回程度。グッと噛みしめると歯には30kg〜50kgの力がかかります。
こんなに使用頻度が高いのに、わたしたちはどうして生涯にわたって物をかみ続けられるのでしょうか。それは、歯がとても丈夫にできているからに他なりません。

物の硬さを測る単位に「モース硬度」というものがあります。これは、ひっかいたときの傷の付きにくさを表すものですが、ダイヤモンドのモース硬度は10、人の歯はモース硬度7です。
つまり、人の歯は宝石でいうと水晶と同じくらいの硬さになります。
硬いものと聞いて思い浮かぶのが「鉄」ですが、実は鉄はモース硬度が4であることを考えると、歯がいかに硬くて傷つきにくいかがよくわかります。

では、なぜ人の歯はこんなにも硬いのでしょうか。
その秘密は歯の表面を覆っている「エナメル質」と呼ばれる部分にあります。実はこの「エナメル質」は、人体の中で一番硬い組織と言われているのです。
この「エナメル質」の内側には「象牙質」と呼ばれる部分があり、そのさらに内側に「歯髄」と呼ばれる柔らかい組織があります。この「歯髄」の中に、神経や血管が通っているのですが、大事な「歯髄」は表面の硬い「エナメル質」によってしっかり保護されているのです。

こんなにも硬くて丈夫な歯ですから、以前は歯を削るのも至難の業でした。しかし50年ほど前に、「エアタービン」と呼ばれる歯を削る機械が開発されました。おかげでより効率よく、正確に歯を削れるようになりました。
歯科医院に行くと、よく「キーン」という高い音が聞こえてきますが、この音が実はエアタービンの音なのです。ちなみに、このエアタービンの先端には歯より硬いダイヤモンドの粉末が付けられています。
しかし、その歯を削る道具も日々進歩しており、今ではギアモーターを内蔵し「キーン」という音がしにくく、熱を持ちにくい、痛みが出にくいなど多くの改良がなされたものが使用されています。私たちは「5倍速」と呼んでいます。

もちろん、いいづか医院で使っているのも、ギアモーターを使用した最新の機械です。歯科医療の技術の向上に伴い、患者さんへの負担が軽い、よりよい治療を行えるようになったのは喜ばしいことですね。

歯科医師にとって、患者さんが日ごろから歯のケアをしっかり行い、虫歯の治療を必要としないのに越したことはありません。しかし、歯科治療が必要とされる以上は、医療の技術と質の向上を目指すしかありません。
いいづか歯科はこれからもよりよい治療を提供していきます。