前回は神経を抜く「抜髄」についてお伝えしましたが、その後の治療についてのご質問をいただきましたので、お伝えしたいと思います。
「虫歯が神経まで行っちゃっていますから、残念ですが神経を抜きましょう。」歯医者さんにそう言われて根管治療(抜髄後の根っこの消毒)を始めたものの、いつまでたっても終わらない。「一体いつになったら終わるんだろう?」なんて不安になったことがありますか。では、根管治療は本当にそんなに時間がかかるものなのでしょうか、ご説明します。
実は、歯の根管の治療の90パーセントは1〜3回で終わります。歯の神経を取る治療では、まず神経を取り、消毒して、薬を詰めるという3ステップを踏みますが、この際、歯の神経が通っている根管が多ければ多いほど時間がかかります。例えば、根管が1、2本の場合には、1、2回程度、3、4本の場合には2、3回程度かかります。しかし、ここで一つポイントがあります。初めて歯の神経の治療をするときに、神経の管が根管に残ってしまうと、何年かしてからもう一度やり直さないといけなくなります。ですから、神経の治療は一回目がとても重要です。さらに、歯の根管はとても細いため神経の治療は非常に繊細な治療です。10円玉の直径と同じ大きさの道具を駆使してお掃除と消毒を繰り返します。実際には歯の根管は直線ではありません。途中から分岐している場合もあります。お時間や回数がかかるのはそのためです。
さて、中には4、5回かけて、やっと終わる神経治療もあります。初めの治療がうまくいかず、根の先にウミがたまってしまうケースや、歯の痛みを我慢してそのままにしていたために、神経が死んで、根の中が腐ってしまうケースなどがあります。いずれの場合も根の中をまた消毒しなければいけないので時間がかかってしまいます。特に、以前神経を治療したことがある歯の場合、歯の中に細菌が入らないように詰めた硬いお薬が入っています。それを少しずつ溶かしながら消毒を行うので、その分時間がかかってしまいます。
また、これはまれなケースですが、治療が終わるまでに6回以上かかることもあります。これは、細菌が歯だけでなく、あごの骨まで広がってしまった場合です。例えば、神経の治療をしている途中に忙しくなって歯科医院に通えなくなる患者様がいます。その場合、時間が空いてしまうので、仮のふたのすき間から、細菌がどんどんと中に入り、周りの骨を溶かしてしまうのです。そうなると、歯だけでなく周りの骨が治るのも待つ必要があるので、余計に時間がかかります。イメージとしてはお腹に穴を開け創膏などを貼ったままにして、痛くない、忙しいからと放置していた状態です。そう考えるといかがでしょうか。
根管治療をできるだけ短時間で終わらせるためには、治療の一回目にできるだけ良い治療を受けることと、痛みがなくなったからといって安心して治療の間隔を開けすぎないようにすることが大切です。
次回は、神経を抜いたはずなのになぜ痛みがあるの?というタイトルです。