どうして神経を抜いた(抜髄をした)のに痛みがでるのでしょうか?

2018年6月1日


前々回のコラムで、とても深い虫歯(C3)で神経まで感染を起こしてしまった場合、やむを得ず神経を抜くことがあるとお伝えしました。簡単にまとめると、虫歯の菌に感染してしまった神経をそのまま残しておくと、細菌がさらに奥深くまで侵入しとても危険だからです。
大切な神経を抜くということが、歯医者にとっても苦渋の決断と言えることがおわかりいただけたのではないかと思います。

神経を抜くと歯自体が弱くなってしまうことはお伝えしましたが、熱さや冷たさ、そして痛みも感じられなくなってしまいます。
しかし、ときどき神経を抜いたはずの歯が、また痛みだすということがあります。これは一体どういうことなのでしょうか。

もちろん、一度抜髄した歯の神経が自然と回復することはありません。では、何が痛みを感じさせるのかというと、歯髄(神経)の先の根尖部(根の先)です。
神経を取り除くときには、根尖部で神経を切断していますが、その先の部分には血液が流れています。様々な原因により、虫歯の細菌が再び歯の根っこを通って歯の外側の根尖部に達してしまい、そこが炎症を起こすと痛みを感じるのです。

そのメカニズムは以下の通りです。根尖に達した虫歯菌が活発に活動し数を増やすと、だんだんと根尖部を圧迫するようになってきます。この時点で痛みが出始めますが、程度が軽いとそれほど違和感がないこともあります。この状態を、一般に「根尖病巣(こんせんびょうそう)」がある状態と言います。では、根尖病巣に気付かず、さらに進行してしまうとどうなるのでしょうか。

先ほど触れたとおり、根尖部の先には血液が流れています。ですから、根尖病巣ができてくると、細菌と戦うために血液中の白血球が戦いを始めます。その際にできた白血球の死骸などを膿と呼びます。この膿がたまると、歯の奥で少しずつ圧迫が強くなってきて、根尖に痛みを感じるようになるわけです。

だれでも痛みを感じるのは嫌なものですが、痛みは体を守るための大切な防御反応です。歯が虫歯になった時に痛みを感じるのも、異常が起こっていることをわたしたちに知らせるためなのです。ですから、歯に痛みを感じたときにはできるだけ早く歯科医院に行き、歯科検診をうけてください。そうすれば、大切な神経を失う確率は格段に下がるでしょう。いいづか歯科では、このコラムを読んで下さるみなさまが、健康な歯で生活を十分に楽しめるよう心から願っています。

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